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コラム

●人生を変えた。小さなベンチャー企業。への転身
私が来国の西海岸に来て働くようになってからすでに二〇年だ。最初の一〇年はマイクロソフトで過ごし、Windows 95 や Internet Explorer3.0/4.0の開発にかかわり、2000年に退社してからは、ベンチャー企業を三つほど立ち上げている。私も、二五歳までは早稲田大学の大学院(理工学部)から東証一部上場企業への就職と、典型的な「レールに乗った」人生を送っていた。そんな私が、あるきっかけから突然大企業を退場し、先行きの分からない小さな外資系のベンチャー企業に転職すると決めた時には、上司からも同僚からも大学の教授からもさんざん「人」あつかいされたことを覚えている。
1986年(昭和61年)、マイクロソフトの日本法人設立の頃。Windowsはまだ無く、OSはMS00Sが国内パソコンではNECが圧倒的なシェアを持っていた。一般ユーザーの間には、パソコン通信が深々に普及し始めたころで、インターネットの存在は、門家以外には、どうとられていた。 米国マイクロソフトは、ナスダック市場に公開した。
彼らから見ると、大企業の研究所の研究員という「将来の保証されたエリート職」を捨てて、外資系のベンチャー企業に転職するなど、自殺行為に見えたのだろうと思う。しかし、結果的には日本はバブルの崩壊とともに1990年からの失われた10年に突入し、当時、まだ知らない人の多い新興ベンチャーの域を出ていなかったマイクロソフトは、90年の半ばにWindows 95 とOffice 95 で世界を席巻し、株式時価総額で私が入社した大企業を大きく上回る世界的な大企業に成長した。ちょうど良いタイミングで米国本社に転籍した私は、マイクロソフトが一番の伸び盛りであった90年代にその中核の開発チームで働くというとてもやりがいのある仕事にありつけることになった。
もちろん、その当時の私にこんな結果になることが予想できていたわけではないが、少なくとも二五歳のやる気まんまんだった私には、そのまま「レールに乗ったまま定年まで保証された道を歩く」よりも、「将来には何の保証も無いけど、自分が参加することによりその会社の将来に大きな影響を与えることができそうな外資系のベンチャー企業」の方が明らかに魅力的に見えたのだ。